| 円錐形のマスクをつけた正装の男が数人、それほど大きくない部屋にいる。 そこへ両脇をエージェントに抱えられた全裸の幽鬼が入ってきた。 幽鬼は自分がなぜ全裸なのか、そして顔もわからぬお偉方（その正装がお偉方のものだとは知っている）の前に 引き出された意味がわからず、困惑するばかりだ。 「どうかね」 ひとりがそう言えば、ほかの者が軽くうなずいた。 「いい身体つきになった」 「悪くない」 おそらく目の前にいるのは自分が知っている人間ばかりなのだろうが、声も違っているし、思考を読み取ろうとしても あのマスクのせいか遮られてしまう。 それ以前に、全裸という恥ずかしい格好で晒されているのが耐えられない。 逃げ出したくとも、両脇はしっかりと固められていて抗うこともできなかった。 「な、なに…？」 ようやく振り絞った声に歩み出たひとりが応えてくれる。 「通過儀礼…とでも称しておくのがいいだろう。どこにでもあるような、それをクリアすれば一人前として 認められる…それだけのことだ」 親しげに幽鬼の頬を軽く叩いたその男と入れ替わりに、別の男が近づいてきた。 ただ、その手にはほかの者のような白手袋ではなく、皮の手袋がはめられている。 男は幽鬼の顔に正面を合わせたまま、その手でいきなり幽鬼の男根を握り締めた。 「や…ッ」 「堪えなさい」 思わず上がった羞恥の声を窘められる。 いつしか男たちの輪が狭められ、幽鬼を取り囲むような形になっていた。 マスク越しの視線に晒されながら、男の手は幽鬼の男根を緩々としごき、撫で上げ、裏筋から双球にまで 這って嬲っていく。 「…ッ…！」 幽鬼は視線を避けるように顔を背け、唇を噛んで必死に声を殺すが、足がガクガクと震えて 支えられていなければ立っていられなかった。 「声を出したいか？」 だれかのささやきにうなずいてしまう。 「では声は許そう。だがこちらは…」 皮手袋がいったん離れ、同じような素材の細い皮紐で、男根の根元を縛り上げた。 「や…ああッ！」 その状態で再び弄ばれる。 「あ…う…んッ！も…ああッ！くる…し…ッ」 感覚ばかりが鋭敏になっていき、血流を止められたせいで男根が激しく脈打つ。 「出したいのかな？」 優しい声音に幽鬼は壊れたようにうなずいた。 男根を愛撫している者が確認するように周囲へ顔を巡らせる。 「まあ、こんなものだろうな」 その言葉に一斉にうなずき、皮紐が解かれた。 ほとんど同時に幽鬼の男根から夥しい精液が迸り、絨毯の上に飛び散った。 「では次だ」 全身の力が抜けたようになっている幽鬼に息をつかせる間もなく、小さなテーブルが引き寄せられ、 エージェントによってそこへ伏せさせられた。 エージェントの手が幽鬼の両腿を持って左右に開かせる。 先ほどの皮手袋は、今や薄い医療用のゴム手袋に変わっていた。 その指に潤滑剤が塗りたくられ、一本の指が幽鬼の狭い孔に差し込まれる。 「い…いやだ…ッ！」 「その割には素直に飲み込んだ」 指がもう一本増やされ、そのまま奥へと侵入してきた。 「拡張済み、と考えていいのかな」 「慣れてはいるようだな」 品定めをされているような言葉をかけられながら、指で体内を蹂躙される…。 「あ…ああ…」 幽鬼の切ない声が室内に満ちていった。 切り忘れたテレビから、成人に対する通過儀礼の様子が流れている。 こんなもののせいでおかしな夢を見た…幽鬼は半身を起こしてテレビをながめた。 精神的にも肉体的にも、成人という一人前として認められる方法などいくらでもあるだろうが、自分がいる組織に おいては成人などというものが意味を成さないことは十分に知っている。 「とはいうものの」 幽鬼はテレビを切ってつぶやいた。 「あんな夢のようなのは、ごめんだがな」 |