| その部屋は完全な防音で、中央に置かれた巨大なベッドがやけに目立った。 今、そのベッドの上では全裸の幽鬼が、同じく全裸のヒィッツカラルドから緊張気味に口づけを受けていた。 気恥ずかしいのはヒィッツカラルドと睦みあっているからだけではない。 ベッドから少し離れたところの椅子に腰掛けた、カワラザキがふたりを見ているからだ。 ほかの男とキスしているところを…ましてやカワラザキに見られていると思うだけで、たまらなく恥ずかしく なってくる。 「ふむ、愛らしい者同士が絡み合っているなど、まるで一幅の絵を見るようじゃな」 笑みを湛えてそんなことを言うカワラザキの目は、いつもの優しげなものではなく調教師のそれになっていた。 「ヒィッツよ、幽鬼はまだ慣れておらんからな、お前がリードするようにな」 「わかった、じいさま」 ふたりはベッドに寝そべり、互いの頭と足の位置を違えて男根を頬張った。 幽鬼もヒィッツカラルドのピアスがついた男根を咥えたが、金属が歯に当たって不快になる。 いっそ外したかったが、たぶんもう肉と同化して外せなくなっているのだろうと思った。 そんなものがついているからヒィッツカラルドは少し感覚が鈍っているのかもしれない。 ヒィッツカラルドの舌技に耐えられなくなって、幽鬼は早々と絶頂を迎えそうになる。 「アッ…アーッ」 「なんだ幽鬼、もうイキそうなのか」 ヒィッツカラルドが口の端を歪めて笑うのを無視し、幽鬼は小さく身を震わせながらカワラザキをうかがった。 「じいさま…イッて…いい…？」 「まあ、しかたないじゃろう。ヒィッツの中に出しなさい」 ヒィッツカラルドが再び幽鬼の男根を咥える。 筋肉質の尻がぴくりと締まって、幽鬼はヒィッツカラルドの口内に射精していた。 息を弾ませながら己の精を飲み下したヒィッツカラルドに後ろめたさを感じる。 ヒィッツカラルドは身体を起こし、何事もなかったようにカワラザキにねだった。 「じいさま、私も満足させてくれないか…？」 「うむ、よかろう」 カワラザキがヒィッツカラルドを抱くと思い、幽鬼はあわてて声を上げる。 「じいさま、お、俺も…」 「いい子だからちょっと待っていなさい。お前とヒィッツは違うからの」 そんなことを言われると嫉妬にも似た思いが胸をよぎってしまう。 自分とヒィッツカラルドがどう違うのかわからないまま、幽鬼はカワラザキとヒィッツカラルドをながめていた。 カワラザキは薄い医療用の手袋をはめると、その手に潤滑剤を塗りたくった。 「足を上げよ」 ヒィッツカラルドは興奮で乾いた唇を舐めながら、言われたとおりに両足を抱える。 露わになった孔に指先をそろえたカワラザキの手がゆっくりと入っていった。 「ア…オオッ！アーッアーッ！」 獣じみた声を上げながらヒィッツカラルドがのた打ち回るのを、幽鬼は驚愕と恐怖を持って見つめていた。 カワラザキの手が見えなくなり肘までもう少しというところまで入ってしまうと、カワラザキは幽鬼のほうを見て 笑った。 「お前はこんなこと、されたくないじゃろ」 幽鬼は小さく首を振る。 いまだに…苦痛を快感に変えることなどできそうにない。 ヒィッツカラルドの声がさらに大きくなったのは、カワラザキが内部で握り拳を作り、なおかつ自分の腕を叩いて 振動を与えているから…それでもヒィッツカラルドは勃起していた。 「幽鬼、ヒィッツを犯してやりなさい…ふふ、ヒィッツに跨ってな」 自分でヒィッツカラルドの男根を挿入しろと言われている…幽鬼はベッドの脇にあった潤滑剤を少し指に 取ると、自分の孔に塗りこんだ。 それからヒィッツカラルドの上に跨り、男根を孔にあてがうと息を吐きながらゆっくり腰を下ろしていった。 「アアッ…アーッ！」 カワラザキや樊瑞ほどの大きさはないが、ヒィッツカラルドの先端にあるリングが、幽鬼の内壁をこすり上げて 快感を与えてくる。 「ヒィッツよ、幽鬼はいい具合じゃろう？」 もはやヒィッツカラルドは声を出すこともできず、ただガクガクと首を上下するだけだった。 「どうじゃ幽鬼、性奴同士で愛し合うのは」 愛なんか伴ってない…そう思いながら、幽鬼はヒィッツカラルドも同じ境遇なのだとわかっている。 「あ、愛して…ないッ…で、でも…気持ちい…いッ」 「ふふ、慰めあうのも悪くはなかろう…ワシひとりで楽しむのはもったいないような気もするがの」 次はだれの前でこんな行為をさせられるのか…しかしそれがカワラザキの命令ならば、幽鬼は難なく 受け入れられそうな気がした。 |