メイド
幽鬼が次に命じられたのは寝室の掃除。
掃除機ではなく、モップとホウキでという古めかしいローゼンスタック夫人が好みそうな掃除方法だった。
カワラザキの寝室は質素そのもので、散らかっている様子もなく掃除も簡単に終えられそうだ。
「あれ？アキレスさま…」
ふと気づけば真っ黒なカバンに変身しているアキレスの姿、つまりカバンがない。
間違ってベッドの下にでも蹴りこんでしまったのかと、幽鬼は床に這いつくばりカワラザキのベッドの下をのぞきこんだ。
「おーい」
広いベッドの下は埃などなかったが、奥のほうは陰になっていて見えにくい。
しばらくごそごそやるうち、幽鬼はまた尻のあたりに奇妙な感覚を覚えた。
そのまま頭をあげてはベッドにぶつけるため、そろそろと這い出してくる。
「なに…してるんですか…」
再び若いカワラザキが幽鬼の尻に手を当てていた。
「やっぱりお前は怪しいな。掃除をしろとは言ったがベッドの下を探れとは…」
「い、いえいえいえ！うっかり大事なものを掃き出したりしては大変だと思って…」
「なぜベッドの下に大事なものがあると思う？」
厳しい目で問い詰められると返答に困る。
「それは、その…はい…」
口ごもっているといきなり身体を反転させられ、ベッドに突き飛ばされた。
手をついた幽鬼が振り向くより先、カワラザキの手がスカートの下からもぐりこんできて、下着の上から男根をつかむ。
「ほほう」
「すいませんすいません、俺、こんな格好してますけど本当は男です。旦那さまの対象にはなりませんから離してください」
「俺はどっちでもかまわねえんだよ」
老体のカワラザキにだってかなわないのに、若いカワラザキに抵抗できるはずなどない。
「や…っ」
「フン、なかなかに感じやすいようだな。もう勃ってきてる…」
やがてカワラザキの手は幽鬼の下着を引きおろし、直に男根を握りしめてゆるゆるとしごき始めた。
「あ…あっ…」
「イかせてほしそうだな…」
呼吸が荒くなり、シーツに指先が食い込む。
「だ…ダメ…も、もう…」
いよいよというときになってカワラザキはふいに手を離してしまった。
「え…」
手を伸ばし枕の下からなにやら取り出すと、幽鬼の両足を開かせて後ろの孔に塗りつける。
息もつかせず太い親指が孔にぐいとねじ込まれた。
「あうっ！」
「簡単に入るところを見ると初めてじゃなさそうだな…俺がほしいか」
指を蠢かして孔を弄ばれ、こんな中途半端な状態で拒絶などできない。
幽鬼は静かに後ろを振り向き、唇の端を歪めるカワラザキに切ない目で訴えた。
「入れて…ください。入れたまま…イかせて…」
「いいだろう。素直な奴は好きだ」
指が抜かれるときにも甘い声が漏れてしまったが、それより何倍も太いカワラザキの男根が挿入されると悲鳴に近い声が上がった。
「あ…ぐ…っ」
「最初はきつそうだったがすぐにほぐれて絡みついてきやがる。ずいぶん上手に躾けられてるな」
「あ…はぁっ」
それが未来の自分自身だとは気づくはずもない。
幽鬼は片手でシーツを握りしめ、もう片方の手で自分の男根をしごいた。
「あ…ああ…イ…イくぅ…」
「出してもいいが、俺のも含めて汚したシーツはお前が取り替えろよ」
「は…はいっ」
ひときわ大きな声を上げて幽鬼は吐精する。
きつく締めつけた瞬間、カワラザキの熱い精が体内へ流れ込んでくる感覚に身震いした。
十数分後。
幽鬼はけだるい身体を預けながらモップで床を掃除していた。
ふとアキレスのカバンが現れる。
寝室の中にはまだふたりの精の匂いが残っていて…幽鬼はドアを開けるとなんのためらいもなくカバンを外に蹴りだした。