愛奴（3）

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　幽鬼の行為は徐々にエスカレートしていった。
　性欲が高まれば部下を自室に引き込んで、舌や手で己の身体を愛撫させる…ただし少しでもそのことを口外する素振りがあればそのエージェントは秘かに始末された。
　もしくは、愛し方が下手な者も含めて。
　そんな中、最近はひとりのエージェントを気に入ったようで、その男にだけ相手をさせていた。
　そして今夜もその男とソファで（幽鬼は決して相手をベッドに引き入れようとはしなかった。幽鬼にとってはあくまでも遊びであり、自分へ挿入させるなど許さなかったから）戯れていた。
　バスローブ姿の幽鬼の足元に跪き、手で男根をしごきながら舌を孔に差し入れて幽鬼を昂ぶらせていく。
「ふ…んっ…んっ…」
　熱を帯びた肌に当たる風を感じ、その不自然さに思わず目を開けたときだった。
　幽鬼は息をのむ。
　いつの間に入ってきたのか、ドアの前にカワラザキが立っていた。
「どけ！」
　思わず足元の男を蹴り飛ばそうとしたが、男のほうが意外な行動に出た。
　素早く身体の位置を変え、幽鬼を後ろから羽交い絞めにしてカワラザキの前になにもかも曝け出させたのだ。
「は、離せっ！」
　それが男の能力でもあるのか、がっちりと捕えられた幽鬼は腕ひとつ動かせない状態になった。
「ご苦労だった」
「はっ」
　カワラザキはいつもの表情で近づき、男の労をねぎらう。
　そして幽鬼は、今やこの男が自分の従順な性奴隷ではなくカワラザキの忠実な部下に戻ったのだと悟った。
「じい…さま…これは…」
「幽鬼よ、ちと悪戯が過ぎたようだな」
　そうしてまだ勃起したままの幽鬼の男根を、皮手袋をつけた手で弄び始めた。
「や…っ…ああっ…」
　カワラザキにそんな痴態を見せてはならないとわかっているのに、冷たく肌触りの良い快感に抗えない。
　どんなにもがこうとも自分を押さえている男の力は緩むことはなく、先端のくびれあたりを集中的に責められた瞬間、幽鬼はか細い声を上げて吐精しカワラザキの手を汚した。
　カワラザキはそれを冷ややかな目で眺め、男に目で合図する。
　男は息を弾ませている幽鬼を己の腕から解き放ち、カワラザキに一礼して去っていった。
　男を見送ってからカワラザキは、ソファに沈む幽鬼の鼻先に手を差し出した。
「お前が汚したのだから、お前がきれいにしなさい」
　幽鬼は少しためらってから、震える舌を突き出してカワラザキの指先にある己の精を舐めとった。
　その瞬間、口の中へぐいと指をねじ込まれた。
「んう…っ」
　それが己の精だと思うと余計に苦く感じられる気がする…そんなふうに感じたのもつかの間、やはり幽鬼の口から強引に指を引き抜いたカワラザキは、今度は幽鬼の片足をつかんで押し開き唾液で濡れている指を孔へ差し込んだ…やはり手袋のままで。
「あーっ」
　こじ開けるような動きと内部の刺激で再び男根が勃起する。
「ふむ、指で弄ばれて女のような声を上げるか」
「ち、ちが…あっあっ…」
　やがて幽鬼の目にはうっすらと涙が浮かんできた。
　それは指で犯されているという屈辱のためではなく…望んでもかなえられない行為への哀しみのため…。
　喘いでいただけの幽鬼の口から、とうとう禁断の言葉があふれ出た。