悪戯

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　幽鬼はようやく上級と呼ばれるエージェントに昇格していた。
　カワラザキという後見人があり、特A級としての能力者であっても段階を踏んでから、というカワラザキの指図だった。
「ご苦労」
　指令を出した上司のカワラザキに報告書を持ってくる。
　そう危険が伴うわけではない…どちらかと言えば退屈な命令には不満だが、カワラザキの親心を思うと反論もできなかった。
　事務用の椅子に腰かけたカワラザキに、机越しではなくわざわざ真横にいって書類を渡す。
　カワラザキは椅子を幽鬼のほうへ向け、受け取った報告書に目を通し始めた。
　たいしたことが書いてあるわけでもない報告書を隅から隅まで見ているカワラザキを見ているうち、幽鬼の中に悪戯心が沸き起こってきた。
　そっとカワラザキの足元に跪き、そのベルトに手をかける。
　ボタンを外し、ファスナーを下せば肌に密着した下着が現れた。
　幽鬼は少し目を細めてそれを見、おもむろに男根の形を布地の上からなぞり始めた。
　カワラザキはなにも言わない。
　幽鬼はさらに大胆になって、先端部分を指先で撫で回していく。
　やがて下着にはそれとわかる染みが浮かんできた。
「ふふっ」
　カワラザキはまだなにも言わず、息ひとつ乱してはいない。
　幽鬼のほうが昂ぶり始め、少し息が荒くなってきていた。
　硬度を増し、下着のままで膨れ上がった男根を握りしめた瞬間、報告書で軽く頭を叩かれた。
　顔を上げた幽鬼を、困った表情のカワラザキが見下ろしている。
「困った悪戯小僧じゃな」
「ご褒美、がもらえると思ったんだ」
　カワラザキは眼鏡を外し、机の上にあるリモコンを操作して部屋の鍵をかけた。
　それが合図でもあったかのように、幽鬼はカワラザキの下着をずらして現れた男根に顔を寄せた。
　突き出した舌で男根を下から上へ舐めあげ、先端を頬張って愛撫する。
「じい…さま…」
　先端を舌で嬲りながら、切ない表情でカワラザキを見上げた。
「ふむ、この程度の働きでは駄賃が相当じゃな」
「…ずるい」
　拗ねたようにそう言って、先端に滲み出してきた液体を啜る。
「ふふ、冗談じゃよ」
　カワラザキは幽鬼の頭に手を置いて髪をくしゃくしゃと撫でた。
「このまま放り出してはお前のことだ、だれかを誘い入れんとも限らんからな」
「妬けるか」
「死体が増えるな」
　冗談とも本気ともつかないことを言い、カワラザキは幽鬼を立たせた。
「膝へこい」
　幽鬼はかすかに頬を赤らめ、自分でズボンと下着を引きおろし、背中を向けてカワラザキの膝に腰を下ろした。
　カワラザキの男根の先端を、幽鬼の尻の谷間に何度か液体を塗りつけるように押しつけるうち、男根は緩々と孔をこじ開けて侵入していった。
「あ…ああっ！」
「これが褒美でよいのかな？」
　幽鬼の耳元で囁けば、愉悦の表情を浮かべた幽鬼がうなずく。
　カワラザキは前に手を回し、勃ち上がった幽鬼の男根をつかんでしごき始めた。
「あ…い…いいっ…いいっ」
　自分でシャツをはだけ、己の乳首をつまんでさらに快感を高める。
　ふたり分の体重と揺すり上げる動きに椅子が激しく軋んだ。
　その音に、幽鬼の絶頂を迎えた甲高い声が混じった。


　身支度を整えた幽鬼が出ていってから、カワラザキは先ほどの報告書を決済済みへ回し小さくつぶやいた。
「はてさて、今後ほかの者から命令を下されても、褒美欲しさに悪戯せねばよいが」