Lonely

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　セルバンテスは幽鬼の背中に手を回して、あまり衝撃を受けないようにベッドへと押し倒した。
　幽鬼は天井へ視線を向けたままで、セルバンテスが静かに自分を剥いでいくに任せている。
　幽鬼が生まれたままの姿になると、次は自分も同じような姿になり身体を重ねた。
「愛してるよ」
　優しい…敵には決して見せはしない目でそうささやく。
「…愛…」
　同じような言葉を吐こうとする幽鬼の唇を、自分の唇でふさいだ。
　角度を変えて唇に吸いつき舌を絡める。
　ようやく離れたとき、幽鬼の口から洩れたのは先ほどとは違う言葉だった。
「…遊びなんだろう…？」
　セルバンテスは小さく笑い、幽鬼の手をつかんで自分の男根に触れさせた。
「遊びじゃこんなふうにはならないよ」
　セルバンテスの唇が幽鬼の首筋を這い、肩から胸へ、胸から腹へ、そして男根へとたどり着いて愛撫する。
　幽鬼は少しずつ息を乱し、快楽にのめり込んでいく頭でぼんやりと考えていた。
　まるで壊れ物を扱うようなセルバンテスの愛撫と、自分が余計なことを考えなくていいようになにもかもを壊してしまおうとするようなカワラザキの愛撫…それを無意識に比べて、意味のないことだと気づいた。
「あ…っ」
　胸につくほどまで両膝を折り曲げられた状態で挿入してくるのもセルバンテス。
　カワラザキなら四つん這いにさせた幽鬼を貫き、激しく揺すり上げてくる。
　以前に一度、セルバンテスがそうするのは幽鬼の顔を見ながら愛をささやきたいからだと言っていたのを思い出した。
「愛しているよ」
　窮屈な孔を拡げられ、前立腺を刺激されて、絶頂まで上り詰めることしか考えられなくなっているのに、そうささやいてくる。
　幽鬼は息を荒らげ、同じような言葉を吐く代わりにセルバンテスの背中をきつく抱きしめて吐精した。


　とろとろと眠って目を覚ますと、ベッドサイドのランプの灯にセルバンテスの顔が浮かび上がった。
「…起きてたのか」
「寝てないよ」
　セルバンテスはそう言って幽鬼の髪をひとすじ指に絡める。
「君の寝顔を見ていた」
「…なぜ」
「ときおり苦しそうで寂しそうな顔をされると、放って寝てなんかいられないよ」
　やはり優しい目でそう言うセルバンテスからふいと目を背けた。
「身体だけの…遊びでいいのに…」
「遊びなんかじゃないよ」
　セルバンテスは幽鬼の手を取り自分の頬にあてさせた。
「私の心を読めばそれが本心の言葉だとわかってもらえるけど君はそうしないだろうし、私がどんなに愛してるとささやいても君は信じないだろう」
　わかっている…セルがそういう男ではないことは十分にわかっている。
　だが。
「…遊びだと…俺を騙してくれ…愛なんて…」
　愛という言葉を発したらだれかを裏切ってしまう…そんな気がしてセルバンテスには言えない。
「かまわないんだ。君が私を愛さなくても、私は君をずっと愛しているよ」
「優しく…するな…」
　片腕で顔を覆い、泣いているのか身体を小さく震わせる。
　ずっと独りで愛されることを知らなかった男を前に、セルバンテスはその頭をかき抱いてやはり優しくささやいてやるのだった。