白い砂浜（レッド）

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　サニーとレッドのデートはいつもアクアリウム。
　とはいっても毎回同じ場所ではない。
　レッドがマメに探してきた、山の中にあるアクアリウムだったり町の中のアクアリウムだったり。
　今日きているのは海の近くにあるアクアリウムで、建物の裏にある石段を降りればすぐ砂浜へと
続いていた。
「海へ出てみるか」
　薄暗いところにはそろそろ飽きたというようにレッドが誘う。
　アクアリウムのほうにはカップルや親子連れがたくさんいるのに、季節外れの海には見向きも
しないのか白い砂浜にはだれもいなかった。
　パーカーのポケットに手を突っ込んで歩くレッドの腕に、サニーはカーディガンの腕を絡めた。
「きゃ…！」
　不意に吹いた強い海風がサニーのつば広帽子を飛ばす。
　追いかけようとするより先に、目に見えないなにかが帽子を途中で止めた。
「ほら」
　いつのまにかレッドは小さな鉤のついた細い糸を放ち、帽子を引き寄せていた。
「あ、ありがとうございます」
　レッドの反射神経のよさに感心しながらも、サニーの目は帽子に空いた小さな穴を見逃さなかった。
「あーん、お気に入りだったのにー」
　ほんの少し頬をふくらませるサニーをレッドが笑う。
「そんな帽子で顔を隠しているからだ」
「女の子にとってこの時期の紫外線は、お肌の大敵なのっ」
「へえ…」
　レッドはサニーの顔をまじまじとながめ、その頬に触れた。
「白いじゃん」
　そう言って、また笑う。
　少し歩いてレッドは急にしゃがみこんだ。
　何事かとサニーものぞき込めば、レッドの指が砂の中から小さな桜貝をつまみあげる。
　その桜貝をサニーの耳に当てた。
「え？なになに？」
「いや、ピアスにしたら似合うか、と思って…やっぱりダメだな」
　レッドは桜貝をぽいと捨てる。
「似合わない？」
　サニーがちょっとがっかりしたように問うとレッドは至極真面目な顔で答えた。
「そうじゃない。お前の耳に穴を開けるなんて気に入らんだけだ」
　思わずサニーの顔が赤くなる。
　言ったあとでなぜかレッドの顔までが赤くなってきた。
　そしてそんなおかしな空気を吹き飛ばすかのように、また強く風が吹く。
「くしゅん！」
　クシャミをしたサニーに、レッドは自分のパーカーを脱いできせてやった。
「でもレッドさまが…」
「いいから」
　レッドの温もりと手の半分まで隠れる大きなパーカーで身体が温かくなっていく。
「はくしょん！」
　今度はレッドがクシャミをした。
「ほらぁ！」
　サニーがあわててパーカーを返そうとするのをレッドが止める。
　そうしてサニーの肩を抱き寄せると必要以上に身体を密着させてきた。
「こうしときゃ、十分だろう」
　ふたり揃ってまた歩き出しながら、サニーはこの砂浜がずっと続けばいいのにと思っていた。