第4話
幽鬼はなかなか寝つけなかった。
今ごろカワラザキは…と考えると胸の中が苦しくなる。
別に…カワラザキは自分だけを愛してくれているのではないし、もしかしたら社長と一緒にいるのも単に仕事の話だけかもしれない。
そもそも、カワラザキとの行為に恋愛感情を求めてもいいのだろうかと考え始める。
ずっと援助してくれていたカワラザキに報いるために、一生懸命勉強して会社に入った。
初めて会い、話をするうちに、この人と一緒に仕事ができればと思うようになり…その願いは叶った。
あれは決算が終わって、その後始末のためにふたりで長く残っていた日だった。
「あとは十常侍と樊瑞に任せればいいだろう。そろそろ帰るか」
伸びをしてそう言ったカワラザキに従い、そのまま食事を奢ってもらった。
それからカワラザキ行きつけのバーへ場所を移し、飲み慣れない強い酒をどれだけ飲んだのか覚えていない。
「あ…ここ…は？」
「おお、目が覚めたか」
カワラザキが酔い覚ましの水を渡す。
「すっかりつぶれてしまったんでな、儂の家へ運んだ」
「す、すみません！」
なにか粗相をしたのではないかとあわてて飛び起きた。
「ははは、気にするな。それより風呂にでも入ってこい。さっぱりする」
「あ、はい…」
言葉に甘え、素直にシャワーを浴びるとぼうっとしていた頭がようやくはっきりする。
ふと冷気を感じて振り向けば、カワラザキが入ってきた。
「せっかくだ。背中でも流してくれ」
「はい」
洗い場の椅子に腰かけてカワラザキが背中を向ける。
その広くて逞しい背中に見とれながら、タオルにボディソープをつけて洗い始めた。
ややあってからふいにカワラザキが振り向いた。
「ついでに前も洗ってくれんか」
「は、はい」
少し戸惑いつつも背中と同じように身体を洗っていく。
しかし幽鬼の視線は、見るまいとしても見えてしまうカワラザキの男根にあった。
己のそれよりずっと大きな男根に委縮してしまう。
「気になるか」
注視していたつもりはないのに、そう言われて弁解する。
「ち、違います。そんなつもりじゃ…」
「ではどういうつもりだ？あまり見ていては儂が照れるが…お前、同性に抵抗はないのか」
同性が好きなわけではない…カワラザキになら、どうされてもかまわないだけだ。
答えず、うつむいていた幽鬼の手を取り、カワラザキは己の男根に触れさせた。
「わかるな？もうお前に挿れる準備はできてるんだ…」
突然の言葉に驚いた。
驚きはしたが抗いもしなかった。
「だがお前のほうはまだだろう。ほら、足を開け」
言われるまま素直に足を開くと、ボディソープをつけたカワラザキの指が幽鬼の孔を弄る。
「あ…っ」
「力を抜け」
武骨な指が一本ゆっくりと挿入され、幽鬼がそれを痛がらないことを確かめてカワラザキは指を増やした。
さすがに二本の指が入り込んで孔を拡げられると、幽鬼もわずかに顔をしかめる。
「ああ、良くしてやらんとな」
同じくソープの滑りを帯びた手が、幽鬼の男根をつかんでしごき始めた。
「あ…ああっ…」
前後を同時に責められ、自慰とは違う快感にすぐ射精しそうになる。
「ふふ、お前、ずいぶんいい顔で喘ぐな」
「や…せ、専務…出…るっ」
「敬語はどうした」
「出…出て…しまいます…っ」
カワラザキは指を幽鬼から引き抜き、男根をしごく手も止めてしまった。
息を荒らげながら、放り出されたようになって幽鬼は戸惑う。
その幽鬼の身体を引き寄せ、太腿をぐいと押し広げた。
「もう十分に解れただろう…先にいかせてしまうときつくなるからな」
そうして孔の周りに残っているソープの滑りを利用し、自分の男根を押し当てると先端を潜り込ませた。
「あーっ！あーっ！」
「ふっふっふ、少しきついが慣らしていけばいい具合になるな…」
「い、痛…」
「ふん、痛みで萎えたか」
先ほどまで勃起していた男根が萎えていく…カワラザキは再びしごいてやった。
「いいか。これから儂の前で恥ずかしいだの嫌だのと言うな。お前は素直に儂を受け入れればいい」
「は、はい…ああっ！」
「うん？後ろに挿れたままでいきそうか…よかろう。ほら、出せ」
幽鬼はカワラザキの手で孔を犯されながら射精し、精液を自分の身体に飛ばした。
「では儂もお前の腹の中にたっぷりと出してやるか。決算のせいで溜まっているからな」
初めての肛交…カワラザキの精液が腸内に流れ込んでくる感覚に、幽鬼は身を震わせた。
「これで終わりではないぞ。抜かずに注ぎ込んでやる」
腰から下の感覚はすでになくなっている…それでも幽鬼は、もしかしたらこれが自分の望んだことの成果なのだと考えていた。