第10話
幽鬼は気を失っていたらしい…目を開けると夜は明けており、カワラザキは自分の隣で眠っていた。
少し身をよじると身体中の関節や筋肉が悲鳴を上げるように痛んだ。
やがて激しい肛交のために、吐き気と腹痛が襲ってくる…幽鬼は這うようにして備え付けのユニットバスへ向かった。
さすがに大浴場へ行くわけにはいかないので、内湯をため、少し熱めの湯に身体を浸す。
大量に注入されたカワラザキの精液があふれ出てきて、何度か湯を取り換える羽目になった。
孔を犯されて、いったいどれくらい自分が達したのか覚えていない。
だが、昨夜のことを思い出すだけでまた自然と勃起し始める。
自慰をしようかとも思ったが、昨夜さんざんカワラザキに扱かれたせいか、触れるだけでもひりひりするのでやめておいた。
小一時間も湯に浸かっていただろうか…ようやく身体の感覚も戻り、十分温まったので浴室を出る。
客間へ戻ると、汚れた布団は片づけられ、朝食が準備されていた。
カワラザキはというと、退屈そうな顔で朝食には見向きもせず、大きめの灰皿でなにかを燃やしていた。
「あ…っ」
幽鬼は小さく声を上げる。
会社の机に置いておくのはまずいかと、とりあえずカバンに入れて持ってきてしまった辞表…切欠があればこの出張中に提出してもいいと思っていたものだ…灰皿の中で炎を上げる紙の、残っている部分に自分の書き文字がある。
幽鬼が入浴している間に、カワラザキは幽鬼のカバンからこれを見つけたのだ。
カワラザキは立ちすくんだままの幽鬼を見上げた。
「もう、必要なかろう？」
幽鬼は泣きそうになるのを堪え、声を絞り出す。
「…はい…」
カワラザキは軽くうなずき、最後の火を上げた辞表に近づけて葉巻に火をつけた。
「…今までで、一番まずい葉っぱだな」
そうしてひと口、ふた口吸い終えるとおもむろにもみ消して明るい声を出した。
「さ、朝飯にするぞ。簡単な指示を済ませて早く社に戻らんと樊瑞がうるさいからな」
経理課へ先日の出張にかかった費用の請求書を提出し、カワラザキ宛の郵便物を持って重役室へ戻ると、カワラザキはちょうど床に敷かれたグリーンの上でパットを決めたところだった。
幽鬼は苦笑して自分の机に向かい、郵便物の受付を始める。
「今日は暇だな。郵便を全部持ってこい」
普段ならくだらないＤＭなどには目を向けないのだが、今日はすこぶる機嫌がいいらしい。
退屈しのぎにはちょうどいいと考えたようだ。
「こちらになります。週明けですので数は少なそうですが」
郵便物を置いて自分の席へ戻ろうとした幽鬼を、軽く手招きする。
「はい？」
尋ねるより先、強い力で引っ張られて、幽鬼はカワラザキの腕の中へ倒れ込む形になった。
「せ、専務…」
「こう暇だとやることはひとつしかなくてな」
そう言いながら幽鬼の尻を撫で回す。
「床に伏せろ」
背中を押され、バランスを崩して床に突っ伏してしまった。
カワラザキはすかさずその腰に取りつき、幽鬼のズボンを下ろそうとする。
「だ、ダメです、専務…っ」
「ん？今さら恥ずかしがることもなかろう」
「そ、そうじゃなく…このあと秘書課の会議があって…」
「ふふ、ならばなおのこと」
徐々に情けない顔になっていく幽鬼を、カワラザキは意地悪く目を細めて見ている。
「二十分ほどあればお前の中にたっぷりと出してやれるだろう」
「そ、そんな…っ。そんなことをされたら会議の途中で出てきてしまいます」
「垂れ流すのは流石に恥ずかしいか」
幽鬼は頬を染めこくんとうなずいた。
「では今だけは許してやろう。ただし、儂を拒んだ罰を与えておくかな」
幽鬼にそのままの体勢でいるよう命じ、引き出しから玩具とベルトを取り出してきた。
「会議中に欲情してはいかんからな」
幽鬼のズボンと下着を引きおろし、男根にベルトを装着して勃起できないようにする。
「あ…っ」
それから後ろの孔には電動の玩具を挿入した。
「あーっ」
「ふふ、音が漏れてはまずいからとりあえずは弱めにしておくか…抜いてはならんぞ」
「は、はい…」
服を戻して立ち上がったが、幽鬼の顔は熱があるようなくらい上気している。
「そろそろ時間ではないのか？」
その言葉に、ときおり身体を小さく震わせながら会議の資料をそろえた。
ドアへと向かいながら切ない顔でカワラザキを振り向く。
「あ、あの…戻ってきたら…」
「わかっておる。ちゃんと可愛がってやるとも」
幽鬼は小さく笑い、乾いた唇を舐めてドアを開けた。