視姦
幽鬼が任務から戻ってきた。
スーツには返り血がべっとりとついており、全身から血の匂いが立ち上っている。
そんな状態の幽鬼から報告書を受け取ったカワラザキは、顎をしゃくってバスルームを指した。
幽鬼は軽くうなずいてバスルームへ向かい、疲れと汚れを落としてからバスローブ姿でカワラザキのところへ戻ってきた。
カワラザキは眼鏡を外して報告書を投げ出すと幽鬼に命じた。
「任務の遂行には問題ない。脱いでみろ」
命ぜられるままに幽鬼はバスローブを脱ぎ、全裸でカワラザキの前に立つ。
カワラザキは幽鬼の周囲をくるりと回りながら、確かめるように鋭い視線で幽鬼の身体を検分する。
「ふむ……」
胸と腹のあたりにわずかな傷があるだけで、背中に傷がないのを確かめカワラザキは軽く幽鬼の身体を叩いた。
「背中に傷を負うな……敵に背中を見せたこととなる」
エージェントとなったときからきつく言われたこと……幽鬼はもう一度自分に刻みつけるように深くうなずいた。
「儂としては、これも気に入らんがな」
そう言って胸の傷を指先でなぞる。
もう十分に確認したはずなのに、カワラザキはまだバスローブをつけろと言わない。
見られている……カワラザキの視線が熱く感じられて、幽鬼は自分の鼓動が速くなっていくように思えた。
「ふふ……溜まっているのか？」
からかいを含んだ口調で男根を弾かれた。
幽鬼は頬をうっすらと染め、カワラザキから視線を外す。
「血の匂いと殺戮で昂ぶったか」
「……かも……しれない……」
それから今度はすがるような目になってカワラザキにしがみついた。
「……鎮めて……」
カワラザキは幽鬼の男根を手で弄びながら、胸に顔を寄せて褐色の突起に歯を立てた。
「……ん……ふっ……」
舌先で転がすうちに突起は硬く尖り、男根は熱を帯びて先端から先走りの汁が滲み出してくる。
幽鬼は息を荒らげてカワラザキを胸から引き離すと、その唇に口づけた。
そうしている間もカワラザキの手は止まらず、男根から離れて尻のほうへ回り込んだ。
筋肉質の尻を何度か撫で回し、おもむろに谷間を割って窮屈な孔に触れる。
幽鬼の孔は指ですら飲み込もうとするようにひくひくと蠢いた。
「……じい……さま……」
焦らされることに耐えかねて幽鬼は唇を離し、自らカワラザキの股間へ手を伸ばしてきた。
「……欲しい……入れて……めちゃくちゃにしてほしい……」
カワラザキはファスナーを下ろして凶器にも似た自分の男根を引き出すと、まるで子供を抱きかかえるように易々と幽鬼の両腿を抱え、大きく広げさせた尻を男根に下ろした。
「ふ……あああっ！」
幽鬼は落ちまいとカワラザキの首に手を回してしがみつく。
窮屈な孔は極限まで広がり、自分の体重がかかって内臓が押し上げられそうになる。
「あ……ぐ……うっ」
それだけでなく、カワラザキがその体位のままで歩くため、揺すられるたびに体内を抉られるような気がした。
「ふふ、これがいいようだな……歩くたびに儂を締めつけてくる」
「あーっ！ あーっ！」
ソファまで歩き、その上に幽鬼を下ろすと、今度は激しく突き上げながら幽鬼の男根をしごき始める。
「あああ……イク……イク……っ」
「うむ、儂もお前の中に出すか」
カワラザキの精が幽鬼の中に吐き出されて身震いするのと、幽鬼自身が吐精して自分の身体を汚すのとは同時だった。
荒い息を吐く幽鬼から男根を取り出して後始末をした後、カワラザキは幽鬼の身体にバスローブをかけてやった。
「もう一度シャワーを浴びるといい。報告書は儂が出してきてやろう」
幽鬼は息を整えながらうなずき、先ほど勢いで噛み切った自分の唇ににじむ血を舐めた。