絆

　13歳になった幽鬼のところへ、カワラザキがひとりの男を連れてきた。
　その男のことは幽鬼もよく知っている…エージェントでありながらも素顔を曝け出す数少ない存在で、いつも勉強を
見てくれたり簡単な世話をしてくれている男だ。
「幽鬼、お前にもそろそろアシスタントが必要だと本部から連絡があってな、お前もよく知っているこやつに命じたよ。
今からは…こやつにいろいろ教わるがいい。今日からお前がこやつの主になる…」
　そうしてカワラザキは別のスタッフと打ち合わせのために、その場を立ち去っていった。
「今まではカワラザキさまの部下として幽鬼さまに接しておりましたが、これから私は幽鬼さまの僕となります」
「よ、よろし…く」
　改めていうのもおかしな感じだが、幽鬼はおずおずと握手の手を伸ばした。
　しかし男は首を振る。
「いいえ、そのような対等な扱いは許されません」
　そうして幽鬼の足元に跪き、戸惑う幽鬼の足に口づけた。
「これよりはこれが妥当な扱いとなります。そして…」
　幽鬼の手を取り、その目を見つめた。
「カワラザキさまより、私と幽鬼さまとのあいだでなんらかの結びつきを作るようにと命じられました。幽鬼さまのお望みは
なんでございますか」
　なにも聞かされていない幽鬼はわけがわからず、男に問うた。
「結びつきって…どうするの…？」
「私がほかの者から聞いた話では、互いに傷を付け合ってその血を啜りあう…という形もあったようです。しかし私には
幽鬼さまを傷つけることなどできません。よろしければ幽鬼さまが私に一生消えない傷をつけていただくと…」
「だ、ダメだ、そんなの！」
　この優しい男にそんな無体な真似はできない…。
「じいさまは…どう言ってた？」
「幽鬼さまのお好きに、と」
　ややあってから幽鬼は消え入りそうな声で提案した。
「お、俺と…ひとつになるのって…どうなのかな…？」
　自分は以前セルバンテスとその方法で秘密を共有した。
　互いが傷つかずになにかを共有できる…幽鬼にはそれしか思いつかなかった。
　それにこの男だったら許せたから…。
「幽鬼さまがそうお望みでしたら…」
　男は表情ひとつ変えずにそう言って、幽鬼を軽々と抱き上げた。


　全裸になった幽鬼を前にしても、男は命令を待つ犬のようだった。
「幽鬼さま、いかがいたしますか。ご命令をどうぞ」
　逆にそんなことを言われると気恥ずかしくなってしまう。
「そ、そんなことできるか…ッ！お、お前が知ってるように…お前の好きにすればいいから…ッ」
　幽鬼はそう言い放ち、赤くなった顔を手で隠してしまった。
　これ以上は不毛な会話になると考え、男は小さく一礼して幽鬼の両足を開かせると顔を埋めた。
「あ…っ」
　突然生き物が這い回るような感触に幽鬼は小さな声を上げる。
　男は幽鬼の男根を含み丁寧に愛撫し、あふれてくる先走りの液も舐め取った。
「あっ…あんんっ…も…」
　なにかを言えばそれが男への命令になってしまう…幽鬼はできるだけ声を殺していたが、巧みな愛撫に絶頂は
すぐにやってきた。
「出…るッ」
　あわてて男の頭を押しのけようとしたが間に合わず、幽鬼は男の口内に放ってしまった。
「あっ、あの…」
　幽鬼は荒い息を吐きながら男を見たが、男はやはり表情を変えずに口の端を拭っただけだった。
「飲ん…じゃったのか？」
「はい、幽鬼さまのものですから」
　男がためらいなくそう言うものだから幽鬼はますます顔を赤くする。
「も、もう、いいから…ッ」
「入れるときにはなにかお使いになりますか？」
「い、いいからッ！」
　しかしそのまま自分を受け入れさせるにはつらいだろうと考えた男は、幽鬼の膝を胸につくくらいまで折り曲げると露わに
なった孔に舌を這わせた。
「や…やだぁっ！」
　初めての感触…幽鬼は激しく首を振る。
「だ、ダメ…ッ…そんな…そんなの…」
　十分に濡らしてからようやく顔を離した男は、己の男根を取り出して孔にあてがいゆっくりと沈めていった。
「ああッ！」
「大丈夫ですか、幽鬼さま」
　いったん中ほどまで入れたところで男は止め、幽鬼の手を取って己の男根に触れさせた。
「おわかりになりますか。私と幽鬼さまがつながっております…」
　幽鬼は切ない目をしてうなずき、小さな声で言った。
「動…け」
「はい」
　男は素直に返事をし、緩々腰を動かし始めた。
「あッ…あはァッ！あうんッ…んッ！」
　幽鬼を乱れさせながら、男は顔も歪めず汗ひとつ浮かべずに淡々と男根を抜き差しする。
　幽鬼の再び勃起した男根から二度目の精が吐き出されると、男は己の男根を引き抜いてしまった。
　幽鬼は激しく胸を上下させながら男を見た。
「出さない…のか」
「幽鬼さまを穢すことになります」
　少し考えてから幽鬼が自分の腹を指した。
「ここに出せ」
「ご命令ですか」
　幽鬼がうなずくと男は己で軽く男根を扱き幽鬼の腹に射精する。
　幽鬼は自分の腹に飛んだ男の精液を指でわずかにすくい、口に含んだ。
「これで…一緒だ」
　幽鬼が笑うと男も初めて苦笑した。


　それからこの男は幽鬼のためにずっと仕えることとなる。