| セルバンテスが指をひとつ鳴らすと、部屋の照明が消える。 その代わりに香油を入れた皿に乗せた灯心へ手をかざせば、暗かった室内にまあるい明かりが投げかけられた。 小さな足音がやってきて、セルバンテスの部屋の前で止まる。 軋んだ音とともにドアが開き、幽鬼が顔を出した。 「おじさ…」 「なにも言わないで…こっちへおいで」 幽鬼の顔色はひどく悪く、身体は小刻みに震えていた。 おずおずと近づいた幽鬼を抱きしめ、セルバンテスは自分の膝の上に乗せる。 「心配しなくていい…幽鬼くんはなにも悪くないよ」 事の起こりは1時間ほど前。 カワラザキが留守なのをいいことに、そういう嗜好のある部下のエージェントが幽鬼の部屋に入り込み、幽鬼を犯そ うとしたのだ。 「や…やめろっ。じいさまに言うぞっ」 「どうせ初めてじゃないんだろうが。セルバンテスさまの部屋へ出入りしているのはわかっているんだぞ」 この男を拒絶したら、カワラザキにセルバンテスとのことが知られてしまう…しかしこの男の言いなりになるなんて まっぴらだった。 軽いジレンマに陥ったとき…幽鬼の口から飛び出したのは拒絶の言葉だけでなく、無数の群雲蟲だった。 「う、うわああっ！」 男に逃げる隙も与えず、蟲たちは男に群がり、鼻も耳も口もふさいでしまい、その身体を食らい尽くしてしまった。 「あ…」 人を殺したことにはあまり意味はない。 問題なのはこの男がカワラザキの部下だということだ。自分の手にかけたことがわかれば、その理由を問われるに 決まっている。 …どうしよう…。 助けを求める相手はひとりしかいなかった…。 「いいんだよ。私もあいつが生きていてじいさまに告げ口されちゃ、たまらないからね」 セルバンテスは男の死体を始末し、ほかの者には自分に対して非礼があったためと言いくるめた。 「でも、じいさまに…」 「もう報告したよ。大丈夫、じいさまはなにも疑わない」 安堵させるように幽鬼の背中を撫でていたが、幽鬼はセルバンテスの首にしがみついてきた。 その身体を抱きとめ、セルバンテスは舌を絡め、子供にするのではない深いキスをする。 「あんな下衆に…幽鬼くんを触らせたりしないよ。じいさまがいないときは私が守ってあげるから…」 ラグの上に押し倒し、生まれたままの姿にして身体中に唇を這わせた。 「こわ…い…」 幽鬼が震えているのは秘密を持つ恐怖のせい…。 「忘れさせてあげるよ…」 いつものように幽鬼の男根を愛撫するだけでなく、セルバンテスは幽鬼を横抱きにすると柔らかそうな尻を押し 開いた。 「あ…」 明かりの香油に指を浸し、窮屈な肉をこじ開けて小さな孔に侵入させていく。 「あ…ぐぅ…！」 「ああ、つらいね…じゃあ、こうだ」 幽鬼の頬に唇を這わせながら、苦痛を快楽へ変える眩惑術にかける。 「ふ…あ…っ」 幽鬼の顔が切なそうになったのを見て、セルバンテスは侵入させていた指を増やした。 「あ…あ…ん…」 「ふふ、感じてきたようだね…前がこんなになってきてるし、後ろもほぐれてきた…」 セルバンテスは取り出した自分の男根に香油を塗りたくると、そのまま幽鬼の孔にあてがった。 「さあ、おじさんと秘密を共有しようね…」 「うあああっ！」 快楽に変えられたとはいえ、セルバンテスが入ってきた衝撃で小さな孔は避け、白い尻を伝わってラグへ鮮血が 滴った。 キスを求めるように突き出された幽鬼の舌に吸い付き、セルバンテスは腰を緩々と動かして幽鬼を貪る。 「この眩惑術が解けたら…秘密の記憶もなくなるからね…」 幽鬼の頭の中は真っ白になり、なにも考えられなくなっていった。 目が覚めたのはいつものベッドの中。 何事もなかったかのような一日…身体中についていたはずのセルバンテスの赤い痕も、今は消えてなくなって いた。 （今夜は、おじさんの部屋へいこうかな…） 幽鬼はなにも知らない。 |