| カワラザキとこの任地に就いてから、幽鬼は12歳になった。 本を読もうがどんな言葉だって理解できるようになったのに、どうしても理解できない言葉がある。 それは「親孝行」という言葉。 しかし幽鬼には親の記憶はない。 新しい記憶として、引き取り手であるカワラザキがずっと育ててくれたのだと刷り込まれている。 けれどその言葉に近いものを考えても、カワラザキの世話はエージェントがやってしまうし、たまに幽鬼がカワラザキを 手伝おうとしてもカワラザキは笑って断るばかり。 「俺が…じいさまにあげられるもの…」 カワラザキが幽鬼の寝室をそっと開ける。 もう12歳になったというのに、カワラザキは幽鬼を案じて自分の就寝前に様子を見にくるのだ。 暗い室内に入り、ベッドに横たわる幽鬼を見て出ていこうとするのを、飛び起きた幽鬼が止めた。 「じいさま、待って」 てっきり眠っているものと思っていたカワラザキは少し驚き、自分の腕にしがみついた幽鬼を見た。 「なんじゃ、まだ眠っておらんかったのか…どうした？話でもあるのかな？」 幽鬼はこくんとうなずきカワラザキをベッドまで引っ張っていった。 座らせ、その膝に上がる。 「…抱っこ、して」 カワラザキは幽鬼がどんなことを言っても、一度たりとて叱ったことはない。 だから優しく微笑みながら幽鬼を抱きしめてやった。 「寂しかったか」 「そう、じゃない」 幽鬼はややあってからカワラザキの目を見つめた。 「じいさま…俺、一生懸命考えたんだ。俺がじいさまにあげられるもの…今まで育ててくれたお返しって…」 カワラザキは一瞬呆気に取られたが、やがて笑いながら幽鬼の頭を撫でた。 「そんなものはいいんじゃよ」 「よくない！」 そして幽鬼はカワラザキの唇にそのまま吸い付いた。 キスと呼ぶにはあまりに稚拙な行為だが、カワラザキは硬直する。 「だから俺…じいさまに…俺のこと、好きにしてほしい…」 たぶんこの子供はその申し出を断ったとしても、この先何度でも申し出てくるだろう…それに単に身体の温もりを求 めているだけとしても、自分が相手をしてやらなければ邪心を持ったエージェントになにかされないとも限らない。 カワラザキは幽鬼を抱きしめたまま、その耳にささやいた。 「ワシが…こんなつもりでお前を引き取ったのではないとだけ、信じてくれ…」 「ふ…あ…」 指で軽く触れただけでも幽鬼は激しく身悶える。 素肌にこすれるシャツの感触に、幽鬼は切ない目でねだった。 「や…だ…じいさまも…じいさまも、脱いでよ…」 「ワシはこれでいいんじゃよ」 「や…だ…じいさまに…触れな…ああっ！」 まだ幼い男根を根元から先端まで、無骨で指で撫で上げこすれば、幽鬼は腰までくねらせ始めた。 それを見てカワラザキは、だれかが幽鬼にこういう行為を教え込んだのだとわかった。 「じい…さまぁ…」 息を弾ませ、カワラザキを愛撫しようと幽鬼が手を伸ばしてくる。 だが、幽鬼をこういう対象として見たことはないためカワラザキは一向にその気になれなかった。 それよりも幽鬼を悦ばせ、満足させてやるほうが面白く思えた。 「幽鬼、指だけでは物足りんか」 「あ…あ…」 「口でしてやろうかの？」 幽鬼は黙っている。 カワラザキはもう一度言った。 「ちゃんと言ってごらん。口でしてほしいかな？」 幽鬼は頬を染めおずおずと口を開いた。 「く…口で…して、ほしい…」 「よしよし。幽鬼はいい子じゃな」 幽鬼の男根を口に含み舌先で嬲りながら、後ろの小さな孔に指を這わせる。 「ふああっ！」 小さな孔が窄まる瞬間、カワラザキが口を離せば男根の先から白濁した液体が迸り、幽鬼の顔やシーツを汚した。 薄い胸を激しく上下させながら呼吸を整えようとする幽鬼に、カワラザキは優しく言った。 「お前はもうワシだけのものじゃからな…だれにも触れさせてはならんぞ」 幽鬼はこくんとうなずき目を閉じた。 気だるさから眠ってしまうのだろう…カワラザキは手近にあったタオルで幽鬼の顔や男根を拭ってやり、上掛けをか けて寝室をあとにした。 十分すぎるほどのお返しに戸惑いながら…。 |