| セルバンテスの部屋を訪ねるのは何度目だろうか。 いつのまにか幽鬼はカワラザキのいない夜に、セルバンテスを訪ねていた。 ふたりともいなければ、それはそれでかまわない。 セルバンテスを訪ねたときに、必ず身体を愛撫されるわけでもなかったし。 だがその行為になんらかの安らぎを感じていたのは間違いない。 たとえそれが愛だの恋だのといった感情に基づいていないとしても。 「困ったねえ」 一度そんなことを話したらセルバンテスは本当に困惑した顔になった。 「おじさんは幽鬼くんのことが好きだよ？好きでなきゃ、こんなことしない」 子供にするものではないキスをしながら、セルバンテスはゆっくりとラグの上に幽鬼を押し倒していく。 「好きだから…するの？」 「もちろんだよ。ふふ…おじさんとしてはもう少し先に進みたいがね」 幽鬼の首筋に唇を這わせながら、大きな手で幽鬼の男根をやんわりと愛撫していく。 「ふ…あ…」 幽鬼がこの行為を欲しているのは、愛だの快感だのではなく、頭の中が真っ白になってなにも考えずにすむ感覚… 当然、堕ちるとか汚れたという気持ちもなかった。 元々自分は不浄の子なのだし。 慣れた愛撫が物足りなくなってくる…幽鬼はセルバンテスにしがみつきささやいた。 「も…っと…もっと、してよ…」 セルバンテスは一瞬驚いたようだったが、すぐに微笑んでささやき返した。 「後戻りが、できなくなっちゃったねえ…」 幽鬼の細い両足をグイと開かせそのあいだに顔を埋める。 指や手だけでなく、舌での愛撫が始まった…。 幽鬼の変化にいち早く気づいたのはカワラザキではなく孔明だった。 毎日の実験で感情の乱れが顕著に現れる…それを怪しまれた。 「じいさまが…いないから…」 「寂しいから、セルバンテス殿のネコと遊んでいるのですか」 幽鬼がうなずくと孔明は小さく嘆息し、疑いもせずアシスタントに命じる。 「カワラザキ殿がいつ戻られるか、早急に連絡なさい。これでは安定したデータが取れません」 嘘はついていない、本当のことを言わないだけだ。 「へえ、明日じいさまが戻ってくるのか」 ラグの上に寝そべったセルバンテスが声を上げる。 「では私と入れ替えだな」 「おじさん…出かけるの？」 「うん。まあ、すぐに戻れるような任務だけどね」 笑いながらセルバンテスは全裸の幽鬼を自分の上に乗せた。 「じいさまとは、こんなことできないね」 「…うん…」 幽鬼はそっとセルバンテスの股間に手を置いた。 「…できないよ」 自分にはまだない密集した陰毛の中から赤黒い男根を探り出し、いつも自分がされているように舌先を這わせた。 「…こんなこと…」 セルバンテスはニヤリと笑い、幽鬼の腰を自分の顔に引き寄せた。 「ふふ、そうだね」 幽鬼の愛撫を受けながら己も幽鬼の男根を口に含む。 （おじさんの好きと、じいさまの好きは違う…きっと…） 呼吸が乱れていく…吸い込む息にセルバンテスの体臭が混じっていく…やがて頭の中が真っ白になる…。 「あ…あ…」 小さな喘ぎを漏らしながら、幽鬼はこの感覚をこれから我慢できるだろうかと考えていた…。 |