手ほどき


 今夜はカワラザキがいない…ひとりには慣れているから別に寂しいというわけではないが、なぜか今夜は眠れない。
 あのネコはどうしただろうかとそっとセルバンテスの部屋を訪ねてみた。
「おや幽鬼くん、眠れないのかな?」
「…ネコは?」
 小さくうなずいてそう尋ねると、ラグの上に腰を下ろしていたセルバンテスは苦笑して答えた。
「ネコは夜歩きするものなんだよ。今ごろは外へお出かけだ」
「…そう」
 幽鬼は少しがっかりしてドアを閉めようとする。セルバンテスが手招きした。
「せっかくきてくれたんだから、おじさんにおやすみのキスをしておくれよ」
「え?」
 突然の申し出に幽鬼がどぎまぎする。
「おや、じいさまにはしないの?」
「…しない」
 セルバンテスが楽しそうに笑った。
「じゃあおじさんが最初でいいだろう?」
 少し気恥ずかしかったが幽鬼はセルバンテスにおずおずと近づき、頬のあたりに唇を触れさせようとした。
 そのとたんセルバンテスは素早く顔を動かし、幽鬼の唇に己の唇を重ねた。
「んっ…!」
 驚いて逃げようとするのをしっかりと抱え、セルバンテスは大人がするような舌を絡める深いキスを続ける。
 ようやく唇が離れたときには、幽鬼は精気を吸い取られたかのようにセルバンテスの腕の中へ崩れ落ちた。
「や、少し激しすぎたかな」
 セルバンテスの真意を知りたくて心を探ろうとするが、身体に力が入らず集中できない。
 セルバンテスは幽鬼をラグの上に寝かせ、覆いかぶさると再びキスをした。
 幽鬼はどうしていいのかわからず、口を閉ざすこともセルバンテスを押し返すこともできずしがみついてしまう。
「ふ…あ…」
「いい子だ…大好きだよ」
 パジャマの下衣に手を差し入れ、まだ幼いそれに手を触れさせる。
 指先で軽くなぞれば幽鬼の身体がびくりと強張った。
 声を出させないよう…なにも考えさせないようにまたキスを続けた。
 大きな手で撫で上げ、指先でつまみ、先端をこね回す。
 幽鬼は必死にセルバンテスにしがみついていたが、弄くられるうちに息が乱れ、とうとう苦しくなって自分から唇を離した。
「や…っ」
 クフィーヤを引き裂かんばかりに握り締める…ほとんど同時にセルバンテスの手が生温かい液体で濡れた。
「初めて…かな?」
「なに…が?」
 息を弾ませながら問い返す。
 セルバンテスは己の濡れた手を見せた。
「こうなるのが、さ」
 幽鬼は目を閉じてこくんとうなずいた。
「ごめん…なさい」
「あやまることなんてないよ。だれだって、こうなる」
 セルバンテスは幽鬼の手を取ると自分の股間へと導いた。
「おじさんだって同じだ」
 幽鬼はセルバンテスの目を見つめた。
 その目は、この先を知りたいかと問うているように見える。
 幽鬼は手を払いのけようかどうしようか迷っていた…。