| 幽鬼のところへ、身の回りをしているアシスタントが見慣れぬ服を持ってやってきた。 「幽鬼さま、今日は検査があるそうですのでこれに着替えてください」 薄いグリーンのそれは検査着。 「全部脱いでそれだけをきて、検査室へきてくださいとのことです」 「痛いこと、する？」 言われたとおりに着替えながら、幽鬼は少し不安になって尋ねる。 ちょっと前にあった健康診断での採血では、カワラザキに抱っこされながらきつく目を閉じていたけど、今日は カワラザキがいないから。 「今日は採血とかはないそうです。痛いことはしないと医師が申しておりました」 それなら、と安心して幽鬼は検査室へと向かった。 そうはいっても白衣でマスクをした医者の姿はやっぱり好きになれない。 ドアを開けて入ろうか迷っていると、医者が素早く見つけて幽鬼を中へ入れた。 「今日は、幽鬼さまの体内に悪い菌がいないかを調べますね。大丈夫、痛いことはありませんから」 医者は優しく微笑んでいるのだろうが、マスクと眼鏡のせいでわからない。 ちょっと怯えている幽鬼を抱き上げ、少し高いベッドに寝かせた。 けれどそのベッドには見たことのない台がついている。 「足をね、ここに乗せましょう。痛いことはしませんが動くと大変ですから固定しますね」 幽鬼は素直にうなずいて、足を大きく広げた格好で台に乗せ、縛られるに任せた。 「まずは熱を測りましょう。感染していると高熱を発するものです」 幽鬼は医者の取り出した体温計を見て口を開ける。 「ああ、いえ、今日は正確な体温を知りたいので、こちらで測りましょうね」 そう言って医者は幽鬼の小さな孔に体温計を差し込んだ。 「や…っ」 恥ずかしがって逃げようとするが足を固定されているので動けない。 しかも足を閉じることもできなかった。 1分きっかりにピピピと電子音がして医者が体温計を引き抜く。 「ふむ、平熱ですね…では次は導尿というのをいたします。悪い菌がいる場所は決まっておりますからね」 相手が子供だと思ってわかりやすく説明してくれているのだろうが、幽鬼は戸惑うばかり。 医者は一番細い管を出してきて、それに丁寧に薬を塗った。 「痛くないように麻酔の薬を塗りますからね。お口を大きく開けてゆっくり息をしていれば痛くないですよ」 そうして幽鬼の小さな男根をつまみ上げ、その先端に管を差し込んでいった。 「や…やあああっ！痛いっ…痛いよっ！」 「ああ、動いてはいけません。すぐに麻酔が効きますから…」 涙を浮かべる幽鬼を覗き込んでくるが、医者のほうは眼鏡のレンズが反射して見えない。 しばらくすると鋭い痛みは消えて違和感だけが残った。 管がどれくらい入ったのだろうと思うより先に、医者が管の先端を容器に垂らす。 ほとんど同時に容器へ液体が流れ込んできた。 「この中に、悪い菌がいないか調べますからね…おや、幽鬼さま、どうされました？」 幽鬼が顔を真っ赤にしている。 「お…お漏らししてるみたいで…恥ずかしい…」 「ははは、これは検査ですからね、恥ずかしいことなんかありませんよ。大人だってやるのですから」 「…そう…なの？」 「そうですとも」 液体が止まると医者は容器を別の場所へ持っていき、再び男根をつまみ上げた。 「では抜きますからね、今度も大きなお口を開けてください」 麻酔が効いているせいか今度は痛くなかった。 もっとも、抜けていくときに少し変な声が出てしまい、あわてて口を押さえたけど。 「さて、それではね、お腹のほうを診ましょうか」 医者がベッドの下にあるペダルを踏む。 幽鬼の頭のほうが下がっていき、小さな孔を曝け出すような格好にされた。 「ええと、一番小さいのじゃないと無理だな…今度は先に幽鬼さまのほうへ薬を塗りましょうね」 先ほどの麻酔薬を今度は幽鬼の孔に塗りたくる。 窮屈な孔をヌルヌルした指で撫で回されるとおかしな気持ちになった。 「先…生…やだ…ぁ」 「ああ、これは失礼。では、さっきのようにもう一度お口を開けてくださいね」 鳥のくちばしのような形の器具が、幽鬼の孔に差し込まれる。 それだけでも少し気持ち悪くて痛いのに、医者がなにか操作すると幽鬼の孔が広がっていくのがわかった。 「い…や…うう…ッ」 「お口を開けていないと痛いですよ」 医者は小さなライトで幽鬼の内部を照らす。 「綺麗ですね…うん？少し荒れているかな…お薬を塗っておいたほうがよさそうですね」 「い、痛いから…ッ。早く…して…」 「はいはい」 なんとなく医者が笑っているような気がするのだが、幽鬼にはそんなことはどうでもよかった。 ただ早く器具を外して楽にして欲しかった。 幽鬼の目になにかがかぶせられた。 「お薬を塗りますね。ちょっと目がちかちかするかもしれませんから、ガーゼを当てておきます」 麻酔のせいでよくわからないが、孔からなにかが外れる感じがする。 そしてその代わりに、なにか太くて熱いもの…幽鬼は医者の指だと信じていたが…が幽鬼の体内に 入ってきた。 「ああっ！」 「幽鬼さま、おかしな声を出さないでください。ちょっとの我慢ですからね」 痛いことは長く感じてしまう…。 「薬が溶けて出てくるかもしれませんからガーゼを当てておきましょう」 そう言って医者は幽鬼の目にかぶせてあったガーゼを腰の下へ当てた。 「はい、これで終わりですよ。ちゃんと立てますか？」 足の拘束を解かれてベッドから下ろされた。 立てるし、歩くこともできるが、なにかがとろりと足を伝わってくるのが気持ち悪い。 「戻ったらシャワーを浴びてくださいね。おつかれさまでした」 医者に送り出され、幽鬼が自分の部屋へ戻ってくると帰還したカワラザキとアシスタントが話していた。 「ワシはそのような話を聞いておらんが」 「でも連絡が…あ、幽鬼さま、おかえりなさい」 幽鬼は力の抜けた様子でこくんとうなずき、バスルームへと足を向けた。 「シャワー…浴びる」 「はい。ではお着替えをご用意いたしますね」 「幽鬼」 ふと思い出したようにカワラザキが呼び止めた。 「なあに、じいさま」 「眩惑のおじさんにあわなかったか？」 幽鬼は首を横に振ってバスルームへ消えた。 カワラザキが首をかしげる。 「フム？さっき飛び立っていったのはセルバンテスの飛行艇じゃと思ったが…やつが幽鬼に顔を見せずに帰るとは 思えん…部下のエージェントだけがきたのかのう…」 真実は白衣の下に。 |